Six Invitational 2021グループステージをマップBANで振り返る

目次

1. はじめに

 皆さんこんにちは、ボンゴレドミンゴと申します。本稿では、先日ひと段落したSI2021のグループステージを、各チームのマップ戦略の観点から振り返っていきたいと思います。(これまでのまとめはこちら)

 Empireの復活が印象的なグループステージでしたが、その復活の要因として「シーズン中は作戦を隠していた」ということを挙げる人もいます。各チーム、SIという大舞台を前に作戦隠しをしていたのか、していたとすれば、マップの選択に違いがあるだろう、という観点からマップBANを調べてみました。

 ここで本稿の前提を確認しておきたいのですが、今年から各地域リーグのレギュレーションが変更になり、全てのリーグでBO1が採用されています。SI2021のグループステージと同じですね。BO1だと、両チームが交互に3マップずつBANすることができるため、BO3やBO5と比較して、プレイするマップを絞る戦略が有効に働きます。極端な話、BO1だけなら練習するマップは4マップでいいわけですよね。作戦を隠しておきたいチームにとってBO1リーグは非常に有難いと思います。隠しておきたいマップ、まだ練度が低いマップが複数あっても、それらはプレイしなくていいわけですから。

 本稿では、地域リーグのマップBANとグループステージのマップBANを比較することで、各チームがSIに備えてマップを隠していたのかどうかを考察します。SIに対する準備度を測ることができるため、今日から始まるプレイオフの展望も少し予想できるかなと思います。なお、ソースは全てSiegeGGです。

2. 各チームのマップBAN比較

① BDS Esport

 まずは優勝候補筆頭、BDSから見ていきましょう。

 左の表がシーズンのマップBAN、右の表がグループステージのマップBANの集計になります。シーズンのマップBANを見ると、山荘をあからさまに嫌がっていたことが分かります。逆に、オレゴン、海岸線はBDSの相手チームからするとやりたくないマップになっていたようです。翻って、グループステージの方を見てみましょう。驚くべきことに、マップBANの傾向が様変わりしています。山荘に対するBAN回数が減っており、領事館と海岸線は全くプレイしていません。また、恐らくシーズンの内容を見てでしょうか、クラブハウスは相手から避けられていたようです。このチームはマップBANの傾向がシーズン中とグループステージで大きく変容しており、SIに向けて意図的に山荘を隠していた可能性がありますね。実際に山荘強かったですし。また、プレイオフではBO3になるので、グループステージでプレイしていない海岸線か領事館のどちらかはやらないといけないはずですが、特に海岸線はプレイオフまでやらなかっただけで普通に「持っている」かもしれませんね。BDSクラスになると、プレイオフを見据えてマップ戦略を構築していそうです。

② Cloud9

 APAC唯一の生き残り、Cloud9を見てみましょう。ちなみに紹介するチームの順番は割と適当なので、目当てのチームだけ見たい方は都度省略してください。

 リーグ戦で相手からBANされまくっていたことからもわかるように、領事館に得意意識を持っているチームでしょう。事実、グループステージの2勝のうち1勝は領事館、しかもあのCAGからもぎ取っています。プレイオフで領事館はやらせてもらえなさそうですね。リーグ戦からグループステージにかけて、一貫して山荘を蹴っています。また、グループステージではオレゴンを比較的よく蹴っていますね。山荘は本当に嫌いなだけかもしれませんが、オレゴンは得意なイメージがあるので、プレイオフで切りたいカードなのかもしれません。BO3に強い(得意マップがはっきりしている)チームだと思うので、もしかしたらプレイオフで台風の目になるかもしれませんね。

③ CYCLOPS athlete gaming

 残念ながらグループステージで敗退が決まったCAGです。日程が進むにつれて熱い戦いを見せてくれていたので残念ですが、それはさておきマップBANを見てみましょう。

 リーグ戦ではクラブハウスとヴィラをよく蹴っていたCAG、グループステージでもその傾向は変わりませんが、加えて海岸線と山荘をよく蹴っていたようです。グループステージではオレゴン、カフェ、領事館をやりたがっていた様子が見て取れます。実際にオレゴンと領事館では金星を上げ、カフェでも非常に惜しい試合を見せていたので、かなりグループステージの戦略がはっきりしていたように感じられます。このチームをBO3で見たかったのが正直な気持ちです。

④ DarkZero

 前評判と比較してかなりグループステージで苦戦したDarkZeroを見てみましょう。

 リーグ戦で積極的にBANしていた山荘をグループステージでは3回プレイしているあたり、このチームは山荘をSI用に残していた可能性がありますね。プレイオフでも積極的にピックするのではないでしょうか。他のマップを見てみると、もともと固定でBANしていたクラブハウスに加えて、グループステージではオレゴン、海岸線も多くBANしています。しかし、相手によってはその辺りのマップを残しており、相手に合わせて柔軟なBANができるチームだと言えるでしょう。かなり事前の準備に長けたチームかもですね。

⑤ FaZe Clan

 「ブラジルオールスターズ」と呼ばれることもあるFaZeです。

 一貫して海岸線はあまりやりたくなさそうにしています。チームが今のメンバーになってからそれほど時間が経っていないため、やるマップを絞っているのかもしれないですね。このチーム自体はそれほどBANに傾向が無いですが、相手チームが蹴るマップがなぜか似通っていて、オレゴン、カフェ、山荘をFaZeとやりたくないチームが多いようです。得意マップがはっきりしているということでしょうし、BO3になるとこの中のどれかを毎回やる形になるのかも。

⑥ FURIA Esports

 おそらく最も過小評価されていたチームではないでしょうか、FURIAを見てみましょう。

 リーグ戦ではカフェを積極的に蹴っていたチームですが、グループステージでも過半は自分たちでBANしており、本当にやりたくないという気持ちが伝わってきます。このチームは海岸線の防衛に強みがあるチームだと個人的には思っているのですが、プレイオフでやらせてもらえるでしょうか…。グループステージのマップ管理に失敗している印象があって、全マップやってるんですよねこのチーム。一通り手の内を見せてしまっているので、相手からすると対策がやりやすいんじゃないでしょうか。ちょっと心配してます。

⑦ G2 Esports

 後半盛り返したものの、大丈夫…?という感じのG2を見てみましょう。

 面白いくらいにシーズンとグループステージでマップの傾向が異なります。シーズン中プレイしていなかったオレゴン、カフェ、山荘をグループステージでは複数回プレイしており、明らかにSIに向けたマップ戦略を構築していたと言えるでしょう。ただ、結果が伴っていないので、もしかすると相手が逆にこのマップBANを誘導していたのかもしれません。まあ外野からだとその辺は分かりませんが、今のG2なら海岸線、領事館、山荘で相手を破壊する形が強そう(こなみ)なのでプレイオフではその辺のマップをピックするかどうかが個人的な注目ポイントです。

⑧ Team Empire

 復活を果たしたロシアンサイボーグ集団はどのようなマップBANをしていたのでしょうか。

 山荘、ヴィラはあまりやりたくなさそうな様子が一貫して見て取れます。たぶん、どっちをよりやりたくないかと考えれば山荘をやりたくないんだと思うので、ヴィラで勝てるかどうかがEmpireのプレイオフを占う気がしています。また、クラブハウスを相手に多くBANされているのはLiquidとBDSを立て続けにクラブハウスで破壊した影響でしょうね。プレイオフでも真っ先にBANされるのではないでしょうか。そうなると海岸線でサイボーグ集団と撃ち合いをしないといけないので、けっこうプレイオフの盤外戦術はEmpire有利に進んでいそうです。

⑨ Team Liquid

 南米王者、ぼく的優勝候補、Liquidを見てみましょう。

 リーグ戦のマップ管理が完璧です。ヴィラ、カフェ、山荘の3マップを見せていないので、SIで奇襲を仕掛けることができます。グループステージでもヴィラとカフェをまだプレイしていません。これはプレイオフで戦う相手にとっては頭が痛くなりそうなところで、この2マップをLiquidが仕上げていないのか隠し持っているのか、判断がつかないのではないでしょうか。場合によってはヴィラとカフェを両方BO3でプレイせざるを得ず、Liquidが盤外戦術で他チームの上を行っていると言えそうです。数少ない、リーグ戦とグループステージを見せ札にしてプレイオフ勝負を挑んでいるチームと言えるでしょう。

⑩ Team oNe eSports

 oNeです。Alem4oくんが好きです。

 リーグ戦で固定BANしていたヴィラをグループステージではちらちら見せています。また、一貫してオレゴンを多くプレイしているので、このマップは得意かもしれないですが、データが出揃いすぎてあまりプレイオフで頼みの綱にするのは危険でしょう。相手側がピックしてきそう。クラブハウス、カフェのサンプルが少ないのが不気味ですね。特にカフェはヴィラと並ぶ固定BAN。相手からするとここを残していいものか非常に悩ましいと思います。初戦で当たるSSGがある意味、人身御供みたいな感じになっちゃいましたね。

⑪ Giants Gaming

 CAGとともにパリを去ることになってしまったGiantsを見てみましょう。

 Liquid同様、リーグ戦で未プレイのマップが3つありますが、領事館は相手が蹴っているケースが多いため意図的にマップを管理していたわけではなさそうです。面白いのが、リーグ戦で最もプレイしていたクラブハウスをグループステージでは固定でBANしているところで、データを取られているマップを避けようとする意志を感じます。リーグ戦で多く蹴っていたカフェであのTSMから1勝をもぎ取ったあたり、リーグ戦で低迷していたとはいえ、SIに向けて爪をしっかり研いでいたことがうかがい知れますね。このチームもやはりBO3慣れしているチームだと思うので、プレイオフで見たかったなあ…という気持ちになります。

⑫ MIBR

 個人的なあれでアレですが、SI見て好きになったチーム筆頭のMIBRを見てみましょう。

 所感として、このチームは相手に合わせて柔軟にBANを変えているのではないかという印象があります。特に固定BANと言えそうなマップがありません。どのマップで勝負しても自分たちの戦術を通せるという自信があるのかも。チーム名こそ変わっていますが、メンバー自体はしばらく変わっていないので作戦の手数が多いんでしょうね。強いて言えば、グループステージではクラブハウス、ヴィラ、カフェのうちどれか2つは必ず蹴っていたようです。苦手、というよりあまり見せたくない、という意識の表れだと信じています。

⑬ Mkers

 ダークホースだけど普通に上手いぞ、Mkersを見てみましょう。

 このチームはEULに所属していないため、代わりに今季のPG Nationals Spring 2021を参照しました。めちゃくちゃ極端なマップ管理をしていて、PGではほぼカフェしかプレイしていません。そんなカフェをグループステージではほぼBANしており、SIに向けたマップ隠しの意識が高すぎます。「撃ち合いのMkers」という意識が各チームに強くあるのか、領事館と海岸線を避けられていますが、このチームの本領はドローン回しにもあるので、割とどのマップでも引けを取らない戦いができているように見えます。PGで見せたカフェと別のカフェを作戦として持っていると、プレイオフでもダークホースが暴れるかもしれませんね。

⑭ Ninjas in Pyjamas

 去年より撃ち合い卍感が強くなっていて引くレベルのNiPを見てみましょう。

 リーグ戦を見てみると、NiP自身に固定BANは特になくて、むしろカフェとクラブハウスをこいつらと戦いたくない、という相手チームの気持ちが強く感じられます。カフェに関してはその傾向がグループステージでも続いていて、BO3になったらカフェを最速で蹴らないとNiPの確定1マップになりそう、という感想になりました。強いてNiP側の苦手マップを考えれば、ヴィラはあまりプレイしたくないのかなあという印象です。ただプレイすれば勝っているので、NiP相手のマップBANはしんどそうだなあと言わざるを得ません。

⑮ Oxygen Esports

 ファンの胃に優しくないタイプの急上昇を見せたOXGを見てみましょう。

 ヴィラとカフェをあまりプレイしたくないという意図が一貫して感じられます。このチームの怖さとして、SIで山荘をプレイしていない、ということがあります。実はグループBでは一度も山荘がプレイされていないのですが、OXGに関して言えば「やりたくない」のではなく「やらせてもらえなかった」というのが正しい表現で、自分たちからは一度も蹴っていません。やはりまだ各チームの仕上がりにむらがある山荘、「やってないけど強そう」なOXGの山荘は相手チームからすると蹴るかどうか非常に悩ましいと思います。意図した結果ではないと思いますが、OXGはマップBANで非常に地の利を得ている気がします。

⑯ Parabellum Esports

 なんとなく某台湾のチームを彷彿とさせるParabellumを見てみましょう。

 Mkersと同様に、このチームはNALに参戦していないため、Challenger League 2021 Stage 1 North Americaを代わりに参照しました。CLでは満遍なく全てのマップをプレイしていたParabellumですが、グループステージではカフェ、領事館、海岸線をほぼ固定でBANしており、やるマップを絞っていることが分かります。プレイオフ進出が一つの目標であったチームだと思うので、BO1に焦点を当てたBAN戦術になっていたのでしょうが、これが逆にデータの偏りという副次的な効果を生んでいて、カフェ、山荘、領事館、海岸線でなにかプランを持っていれば大物食いをするかもしれません。

⑰ Spacestation Gaming

 どうにかCanadianが引退を踏みとどまってくれないものか、SSGを見てみましょう。

 Canadianの電撃復帰、という特殊な状況だからでしょうか、最新マップである山荘はグループステージでプレイしませんでした。かなり尖ったBANをしていて、大得意のクラブハウスや海岸線を残したいという意図が見られます。グループステージでは苦戦したSSGですが、比較的自分たちの好きなマップをプレイできるBO3のプレイオフではクラブハウスとかピックできて善戦できるかもしれません。急なロースター変更を繰り返しているチームなのでマップ隠しとかしてる感じは見られませんね。とにかく全力で目の前の試合を勝ちに来ている印象があります。

⑱ TSM

最後は真・優勝候補のTSMを見てみましょう。

 リーグ戦でSIに向けたマップ管理をしている印象はないです。強いて言えば、クラブハウス絶対BANという戦略を改めているくらいでしょうか。ただし、言葉を選ばずに言えば、格下相手にはクラブハウスをBANしない、という傾向があるので、プレイオフではクラブハウスを変わらずBANしそうです。苦手マップらしい苦手マップが無いので、相手チームからすると、自分たちの強みが出せるマップで勝負しよう、という思考になりそうです。無敵のカフェをGiantsが潰したので、もしかするとGiantsの一刺しがTSMの致命傷になるかもしれませんね。

3. まとめ

 6000字超の長文になってしまいました。最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございます。なんとなく、グループステージ突破に焦点を当てていたチーム、優勝を目標にしているチームでマップBANの傾向が違いそうだなあ、プレイオフはこのチームが戦略上有利だなあという傾向が見えてきたんじゃないでしょうか。

 残りあと5日間。私たちも体内時計を破壊して推しチームを応援しましょう。

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この記事を書いた人

SiegeGamers発起人。
プロチームに3年半ほど所属していたので、その経験や知識を活かして皆さんに分かりやすく記事を書けたらと思っております。

東京デザインテクノロジーセンター専門学校 プロゲーマー専攻講師

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